看護師専門転職サービス ナースのしごとら
大学病院から美容クリニックに転職した看護師にインタビュー

大学病院から美容クリニックに転職した看護師にインタビュー

今回インタビューするのは、大学病院から美容皮膚科クリニックへ転職した看護師のAさん。安定的と言われる大学病院でのキャリアを手放し、美容クリニックに転職した理由やその当時の不安について本音で語っていただきました。

医師のサポート役の病棟看護師か、自分の手で施術する美容皮膚科看護師か、 大学病院から心機一転、美容クリニックへの転職を考えた最初のきっかけについて教えてください。

前職時代に看護師長から「そろそろキャリアについて考えた方が良い時期だよ」と言われたのが転職を考えるようになった最初のきっかけでした。当時の私は看護師になって5年目、先輩として後輩を育てた経験もあり、循環器内科の看護師として一通りの知識は身につけていました。次のステップとして、教育系に進むのか、院内での昇進を目指すのか、循環器内科の道を極めて専門看護師になるのか、はたまた違う科の勉強をしてみるか、と進路についてちょうど考える時期だったんです。

そこで美容看護師の道が出てきた理由は何ですか?

私自身美容が好きだったことももちろんですけど、自分の力で役に立ちたいという気持ちが強かったからですね。病棟勤めの看護師の仕事は、先生の指示を確実に遂行すること。先生が指示を出し、それを聞いた看護師が患者さんのために看護を行う。あくまで、先生の指示を受けて仕事をする、いわば受け身の仕事がメインでした。
一方、美容看護師、特に美容皮膚科は看護師が主体の業務がメインです。看護師がレーザー照射を行なって、それに対してお客様から「ありがとう」「ずっと嫌だったこのシミが消えて嬉しい」といった喜びの声を直接頂くことができるんですよ。

病棟の看護師は医師のサポート役、美容クリニックの看護師は自らが施術を行うという特徴があるんですね。

まさに私はその特徴に惹かれました。5年間病棟で看護師としての経験を積んだ先のキャリアステップを考えた時、「自分が行動して自分で成果を出したい」と思いました。
しかし、自分で施術するということは、何かあった時に、自分一人に責任がのしかかるということ。それでも、自分の手で患者さんのために何かしたいという気持ちが強かったですね。そんな想いから転職先を調べていたところ、美容皮膚科は自分の思い描くキャリアにピッタリだと思うようになりました。

「美容医療業界で働くなんて看護師じゃない」って本当?

やはり、総合病院から美容クリニックに転職することは、すぐに答えが出せないほどの大きな決断でしたね。あの時の不安は一言では表わせないです。
この用紙に署名してハンコを押すだけで退職できてしまう。この決断によって私の人生がストップしてしまうのではないか。そんな先の見えない不安がありました。
学生時代のアルバイトも割と長く続けるタイプだったので、仕事を辞めることに対しての抵抗感や、退職=逃げみたいな感覚があって、とにかくモヤモヤしていました。
退職の話をするとありがたいことに引き止めていただきましたしね。

あと、周囲からの「美容医療業界で働くなんて看護師とは言えない」といった美容医療に対するマイナスイメージもすぐに転職を決められなかった一つの要因でした。 周囲があまりにそう言ってくるので、世間体を気にしてしまうようになりましたね。

美容医療に対するマイナスイメージは、どこから来るのでしょうか?

病棟勤務の看護師をしていると美容医療業界の情報は全く入ってこないですね。だからみんなイメージや先入観であれこれ言うんだと思います。
「病気じゃない健康な人にメスを入れるのは医療行為って言えないでしょう?」
「病院施設じゃない場所で医療行為をすると医療事故になるんじゃない?」
「お金儲けのために高額医療費を請求しているんでしょ?」
など色々な憶測を聞きました。
情報が入ってこないのもそうですが、「マイナス(病気)をゼロ(健康)に変えることが医療」というイメージがあると、「ゼロをプラスに変える」美容医療の仕事は理解しづらいのかもしれません。

そういった周囲からのマイナスイメージに対して、自身は美容看護師についてどう思っていたんですか?

「ゼロをプラスに変える」ことに関しては、素晴らしいことだと思っていました。
なので、周囲のネガティブな意見を不思議に感じていましたね。
女性の場合、肌荒れしただけで外出したくないとかもあると思います。
コンプレックスは、他人から見て些細なことでも本人にとっては深刻な悩みであることがほとんどです。
そんな悩みを解消したいお客様に対して、適切な価格で効果のある処置を提供することは、とても価値のある仕事だと思っていました。

他にも世間から見た美容看護師に対するイメージってありますか?

美容看護師は「楽」というイメージを持たれがちです。そんなに大変な仕事ではないけど高給与と思われがちです。
だけど、私はそのように考えたことはありませんでした。
看護師として働いている以上、どこの業界も甘くないと思っていました。
むしろ看護師主体の美容皮膚科なら、判断力や知識や責任がより求められる大変な仕事なのだろうなと想像していました。
そう思いつつも、いろんな人からマイナスなことを言われると、深刻に考えてしまっていましたね。

世間からのマイナスイメージと葛藤しながらも、最終的に転職を決断した決め手は何だったのでしょうか?

クリニックでの最終面接で覚悟が決まりました。最終面接は、クリニックの院長様と行ないました。
実は院長先生は私の前職である病院の心臓血管外科の先生だったんです。存じてはいたものの、お会いするのは初めてでした。
そして、先生を前に緊張する私に向かって先生はこう言ったんです。

「これから美容クリニックで5年間勤めたとします。すると、世間はその5年をブランクと見ます。それでもいい?」

美容クリニックの先生自身がそんなことをおっしゃるんですね…。それは、他病院からすると美容クリニックでのキャリアは0に等しいという意味でした。
私もそう聞かれた時はびっくりしました。普通ならそこで「転職はやめよう」って落ち込んでしまうかもしれません。でも、私は逆でした。
「今後のキャリアを考えると厳しい環境かもしれないけど、覚悟を持って一緒に頑張っていこう」という先生の思いをぶつけてくれたのだと感じました。
なので、私は「大丈夫です!やります!」と即答しました。

院長先生の言葉で、美容クリニックの道へ進む不安は払拭されたんですね。

むしろ、やる気が出ましたね。この未知の世界を先生はあえて選んでいますし、看護師の私にも選択権があります。不安が完全に消えた訳ではないですけど、何があっても乗り越えようという覚悟が生まれました。
また、私の最大の理解者である母の言葉も決断の後押しになりました。「自分のやりたいことをやりなさい。やってみてダメだったらすぐにやめたらいいよ。やらずに後悔するより、やって学びを得て次に活かした方が良いんじゃない?」と言ってくれたんです。そう言われて、大学病院の看護師の道も良いけど、私は美容クリニックでチャレンジするんだという決意が完全に固まりました。

美容皮膚科と美容外科の看護師に向き不向きはあるのでしょうか?

美容皮膚科と美容外科は意外と違いがあるので、向き不向きはあると思います。
一概には言えませんが、美容皮膚科はレーザー照射といった中長期的に通院することで効果を発揮する施術がメインとなります。看護師主体の医療行為が多く、お客様と長期的にお付き合いできるのが特徴です。
美容外科は、脂肪吸引や輪郭矯正などに代表されるように、医師の医療行為がメインになる施術が多いので、看護師には医師の仕事を円滑に行なう為のサポート力が求められます。また、美容外科は劇的に変化を与える施術が多いので、お客様の喜びも大きく、外見や感情の変化をすぐそばで見守ることができるのが特徴です。

美容皮膚科も美容外科もそれぞれ素敵な要素があるんですね。

どちらにやりがいを感じるかは看護師の性格に左右されると思います。
私は患者さんと長期的にお付き合いする方が好きだったので、美容皮膚科向きかなと思いました。もしどちらに進もうか迷ったらご自身の性格をもとに考えてみるといいかもしれませんね。